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彼女は彼女を天使と呼んだ(25)

 理絵子の言わんとするところは〝情報リテラシー〟という言葉で表現出来ると父親は言った。
 すなわち、有象無象の情報を認識し、整理し、正偽を見抜く能力。
「と、いうことか?」
 父親は総括して訊いた。
「そう。話し言葉ならイントネーションなんかでニュアンスは伝わる。しかし文字はそこまでの能力は持たない。幾ら絵文字でデコったところで、軽さや真剣さ、本気か冗談か、までは伝わらない。些細なひと言が集中攻撃につながってもおかしくはない」
 父親は首肯し。
「なるほどな。でも、だったらなぜ生身の付き合いをしないんだろう。目を合わすどころか、喋るどころか、メールという文字媒体だけでやりとりをする理由は?」
 理絵子は3枚目のチョコを口に放り込んで、そのまま凝固してしまった。
 そうだ。やれば良いではないか。済むではないか。
 何故だろう。
「そこに本質が隠されているんじゃないか?。ネットはメールの延長線上だろ?お前達の世代は。さ、オレは寝るぞ」
 父親は立ち上がり、ビールの空き缶を捨てに行った。
 そこから先は自分で考えろということだろう。まぁ、コミュニケーションに対する意識も手段と自分たちは異なる。父親からはオトナな一般解しか出て来るまい。
 脳内ペンディングとして自室に戻ると、机上で携帯電話の背面LEDがピカピカしている。
 見ただけで主将君からメールが来たのだと判る。まぁ、用事があるならメールで寄越せと言ったのは自分だ。
 受信ボックス。

『どんなタイプの男子が好き?』

 それが〝相談〟かよ。

『Re:関係ないことメールで訊いてこない人』

 全く。

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