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ブリリアント・ハート【6】

 籠絡失敗か。レムリアがしょげた次の瞬間。
 部屋の入口ドアからインターカムにコール。
「はい」
『ご案内します。内緒ですよ』
 先ほどのメイドのおねーさん。
 レムリアは用意する。ウェストバッグを身につけ、電話と財布を放り込み、ダテ眼鏡にストローハット。
 ドアを開くと、メイドさんは無言で歩き出す。エレベータ脇の廊下の向こう。
 非常口…否。
 壁と思った部分が内側に一段落ち込み、スライドして開く。
 中は小部屋になっており、掃除用具一式。更に奥には下への階段。
「掃除するのに毎度支配人からカギを借りるわけにも行かないので」
 メイドさんは言った。清掃などメンテナンス用に、秘密、とまでは言わないが、目立たないように別ルートが設けてあるのだ。
 階段を下り、ドアを開けると、従業員控え室。
 休憩中だろう女性が数名。ほどなくメガネの女の子が何者か判り、びっくり仰天。
「しーっ!」
 レムリアの仕草に、意図するところはすぐ理解が得られたようである。道を空けて通してくれる。
「ありがとう」
「気をつけて」
 従業員エレベータでフロント階へ。
 従業員出入り口はトイレ脇で、ちょうど、おめかしした女性がトイレから出て来たところ。メイドさんはその後ろについて行ってと、タイミング良く送り出してくれた。
 女性はホテルから外へ出るようだ。それならそれでよい。エスカレータで1階、駅コンコース部の出入り口へ降りる。両脇に警備員が立っているが、女性の斜め後ろに、さもその娘であるかの如く従い、伏し目がちに歩く。
 警備員は…気付かない。
 脱出成功。ホテルは駅ビルの一部になっており、出てしまえば200万都市の中心駅だ。人の波は途切れることなく、他方レムリアは、日本の街にいてもそれと目立たない姿顔立ちであることは書いた通り。
 レムリアは喜んで地下鉄の駅へ向かった。制限時間はおよそ3時間。

つづく

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