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ブリリアント・ハート【9】

 隣にいたピンヒールの若い女性が足首をひねり、バランスを崩して踏み外した。
「あっ!」
 声を上げ、しりもちをつき、そのまま階段を転げ落ちる。
「大丈夫ですかっ!?」
 レムリアは思わず声を出した。反射的に行動する。集まる衆目より一足早く、階段を駆け降り、近寄った。
 女性は横たわり、腰に手を当てて顔をしかめている。
 意識はある。頭を打った様子もない。手を握り、視線が自分に向くのを待って、ひねった足首に触れてみる。
 痛いのだろう。女性は声を上げ、身体をびくりと震わせた。これでは歩くのは難しい。病院で見てもらうのが適当。
 二人いた警官が走ってきた。
 間近に見られる危険性を覚える。が、それを気にしている場合ではない。もしバレたらそれはそれ。
「どうしました」
「大丈夫ですか?」
 警官が衆目をかき分けて顔を出す。
「足首をひねって腰を打っています。これでは歩けません。近くに整形外科か総合病院はありますか?」
 警官達が二の句を継ぐ前にレムリアは言い、ややずり下がったメガネを直した。
 すると、誰かが連絡したのだろう、階段の上から駅員が担架抱えて走り降りてくる。
「救急車呼びますか?」
 駅員の一人が警官に問うた。
 レムリアはその間にウェストバッグを開き、サロメチールのチューブを取り出す。ちょっと症状が重そうなので気休めに近いが、放っておくと腫れて熱くなってがんがん痛くなる。何もしないよりはマシ。
「いや、我々の方で連れて行きますわ」
 警官の片方が言い、肩口の無線マイクになにやらボソボソ。

つづく

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