彼女は彼女を天使と呼んだ(54)
仕方ない。逆手に取るか。
「私がお祓いするなら行きますか?」
「え?黒野さんやっぱり……」
「やり方一通り掌握してるってコト。オカルト作品も文芸部の売り物ですから。ちゃんと高尾山の修験者に真言聞いて印契(いんげい)も教わってきました」
ウソは言ってない。
「みんなが納得できる方法を選べばいいんじゃないの?」
担任竹内が口添え。こんなオカルトまがいな話題に対する教員の弁ではないが、この竹内教諭はその事件がきっかけでこのクラスのピンチヒッター担任を請け負った。従い、背景を知る一人ではある。
「私も黒野さんにやってもらったし」
この一言でクラスの流れは一気に傾いた。荷物持ってゾロゾロ移動し、普段誰も通らない階段を上がって、部屋に入ってもらう。〝禁断の4階〟に集団で向かう有様に気付き、ドアを開けて何事かと見る他のクラスもあり。
多目的室。普通の教室2個分のスペース。3人掛けの長い机と椅子がズラズラ並び、つるべ式に上下移動する2段の大きな黒板を備える。ビデオプロジェクタとスクリーンも設置されていたが、部屋の使用をやめたため、高価な機材であるプロジェクタは取り外された。天井に配線が一部ぶら下がり、クモの巣とホコリ。
理絵子はまず、窓を全部開いて冬の冷気を澱んだ室内に呼び込んだ。
「寒いよ」
「凛とするでしょ」
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