彼女は彼女を天使と呼んだ(32)
題名:例の会議のこと
本文:俺らの意見をまとめたい。帰り図書館はダメ?
彼からのメールの持つ〝重み〟がガラリ一変したことは明らかと言えた。
それが、彼がその場に居合わせたせいか、時期的に本格的に考える必要に迫られたせいか、は、判然としない。ただ、自分の「みんな好きだから」は、自分のクラスのみならず、その場に居合わせた別のクラスの生徒達を通じ、学年全体に衝撃波として広がったようである。5時限目の始め、隣のクラスの担任で社会担当の作二(さくじ:同教諭の姓名の名の部分。教諭自身がそう呼べと生徒達に言い、故にそう呼ばれている)が、開口一番、「俺もオマエラみんな好きだから」とブチかましたからだ。
放課後。
サッカー部は野球部に校庭を貸す日とかで活動がないらしく、無理に機会を作ったわけでもない、ということで、中央図書館で落ち合った。
閲覧室机に積み上げた教育学・心理学系の書物。なお、こういうスペースが少々ざわついている、と書くと、ある年代層より上には信じがたい描写かも知れないが。
要するに空調完備の無料休憩スペースと化しているのが昨今である。
「さてと」
理絵子は主将君の向かいに腰を下ろした。
主将君は困惑顔。
「こんな難しいの俺わかんねーよ」
「こういうので箔を付けないとセンコー共が納得しないんだってば」
作戦を説明する。思春期ならではの情動は、自分たちなら〝ありがちなパターン〟で片づく。しかしとうの昔にしおたれたおじさんおばさんには通じない。
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