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彼女は彼女を天使と呼んだ(52)

 黒板の真ん中に大きな白い文字で黒野理絵子。
 その周りを埋め尽くす同じく白文字〝死ね〟〝死ね〟〝死ね〟……
 いやむしろ死ねの文字で黒板を埋め尽くし、最後にその上に黒野理絵子と書きくわえた。そんなイメージ。
 対象はもちろん自分なのだが、誰が何のためにとか言う以前に、事態が余りに凄まじすぎて言葉がない。
 その片隅、クラスメートの女子が二人、雑巾で一生懸命。足元には洗剤やらアルコールやら。
「あ、黒野さん」
「消えないよこれ……」
「ひどいよう……」
 泣き出してしまう。理絵子は彼女達を抱きかかえに行った。
「そりゃ消えねーだろ、これペンキだもんよ」
 桜井優子が文字を指先でなぞり、溜め息混じりに一言。
「どうやってこんなに……」
「簡単だよ。死ねってデカくパソでプリントして、文字のトコ切り抜くんだよ。後はスプレーだろ」
「型紙か……」
「センセこれ絶対(ぜってぇ)消えねーぜ。街中の落書きと一緒で塗りつぶすしかない」
 桜井優子は拳で黒板をダンと叩いた。
 対し担任竹内は腕組みして唇を噛んで聞いていたが、頷き、溜め息ひとつ。
「判りました。この教室を使うのはやめましょう。移動します。場所を探しますのでみんなは荷物をまとめて待ってて。黒野さんちょっとみんなを……ってああ、一番傷ついてるのはあなたなのに何頼んでんのかしらあたし」
「いえ、私大丈夫ですから。みんなありがとう。自分のために泣いてくれる友達がいるって一番幸せなことだよ」

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