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彼女は彼女を天使と呼んだ(49)

14

「理絵子起きなさい!」
「わっ!」
「わーっ!」
 以上一秒半の間に起こった出来事は次の通りである。理絵子の母親が理絵子を起こしに来、布団を被ってカメの如くであった理絵子が驚いて起床して声を出し。
 その声に今度は母親の方が驚いたのである。
「ああびっくりした!」
「びっくりしたのはこっちよ!今日は音立てずに出てったと思ったら何時だと思ってるのよ!」
 母親は飛び出したカメに心底驚いたようで、胸元を押さえながらドア上の時計を指差した。
 8時。
 始業は8時半である。大寝坊だ。
 しかし何で?自分。
「ちょ。は?え?」
 で、思い出す。夜更かししたこととその理由。
「いいから着替えて降りてきなさい」
 セーラー服にメタモルフォーゼ。それはいいが、スカートの丈を縮める時間はないし、普段なら寝る間机上で携帯電話のお守りをしているりぼんがどうしても見つからない。
「あれ?」
 後で思えばクローゼットに予備のスカーフと一緒に洗った在庫が、なのだが、母親が急かしたせいか思慮が及ばず。
「無しで行きなさい。りぼん一本で世界が変わる訳じゃない。ほらパン」
 食パン口にくわえて家から飛び出すなんてマンガみたいな展開をまさか自分がやる羽目になるとは。スカート踊らせ、髪振り乱して坂駆け下るその有様は、恐らくはパン食い般若。
 しかし、そこでそれこそ予知が動いた。マンガ気分はここまでだ。

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