« ブリリアント・ハート【10】 | トップページ | 彼女は彼女を天使と呼んだ(41) »

彼女は彼女を天使と呼んだ(40)

 他方理絵子の感触。骨に直接というか、肉感的というか、その節くれ立ったようなゴツさと、〝肌のきめの粗さ〟は、記憶にある父親の大きな掌を思わせる。
 ただ。
 少し、しっとりしていた。
「まぁ眺めてみて、明日意見を聞かせてよ」
「う、うん」
 震えているのか、彼の手の中で、コピー紙がカサッ、カサッと音を立てる。
 とまれ用は済んだ。
「じゃ」
「お邪魔しました」
 二人は口々に言い、頭を下げ去ろうとする。引き留めたのは彼の母親。
「あ~ちょっと待って。健太。あんたはレディに荷物持たせて。あまつさえはこの夜道を二人でトボトボ帰らせる気かい?」
 いえ、二人でルンルン帰れますので、と、言おうとしたら、主将健太はしゃちほこばった。
「それは……」
 サングラスをしていても判る逡巡。
 母親は溜め息。
「じゃぁあたしがクルマでひとっ走り行ってくるかねぇ」
「判ってるって行く行く。オレが送ってくよ。でもちょっと待ってくれよ。砂が目に入って取れなくて涙目なんだよ。みっともねーんだよ」
「それって、病院行った方が良くない?」
 理絵子は小首を傾げて提案し、サングラスの奥を覗き込むように見た。
 それならそれで他意はない。目玉に傷が付いてその傷の中に砂粒が、というのは実際あり得る。
 すると、主将健太は盛大にブンブンと首を左右に振り、
「あ、いやそれほどじゃない。ぜってぇそんなことねぇから。とにかくちょっと待ってくれよ。用意して来るから」
 健太君はバタバタと自室に戻って行く。

→次

|

« ブリリアント・ハート【10】 | トップページ | 彼女は彼女を天使と呼んだ(41) »

小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 彼女は彼女を天使と呼んだ(40):

« ブリリアント・ハート【10】 | トップページ | 彼女は彼女を天使と呼んだ(41) »