彼女は彼女を天使と呼んだ(41)
その背を見送り母親は溜め息。
「何考えてんだか。この歳の男の子はワカラン。ちょっと待ってね。ウーロン茶でいい?玄関先で悪いけど」
「あ、いえ、お構いなく」
「レディに足労のお駄賃よ。この中想像を絶するモノが入ってるんだから」
すると部屋奥より抗議の大声。内部陳列開示厳禁。
「誰が見せますか。末代に渡る我が家の恥よ」
母親は言い、やっこらせっと声を出して、スポーツバッグを玄関脇の脱衣場へ投げ出した。
そこで本橋美砂が一撃。
「エッチなのはいけないと思います」
後で聞いたらゲームキャラクターの名台詞(?)だとか。
果たして彼。
「バカヤロー!クソおかん死ねっ!」
「あら図星かい。……私らンな本の入ったバッグ抱えて図書館から電車に乗って人混み歩いて。ンな本持ってだよ。花の乙女が二人して。如何?黒野理絵子さん」
理絵子は水を向けられ。どうコメントしたもんだか。
「乱暴な言葉もいけないと思います」
このくらいか。すると、泣き声が聞こえて来たのはウソかホントか。
ただ、どこかぎこちなかった自分たちの会話が和んだ、とは思った。
気付く。美砂姉がそうなるように動かした?
「彼は男性として機能正常と判断されます。お母様」
「あっはっは!」
冬の日暮れは早い。
関東山地を西側に控えるこの町では、都心より尚早く陽光が山陰に隠れる。
健太君は率先というより、ふてくされたように二人の先頭を?二人から離れて?駅へ向かう。
理絵子は美砂に持論を開いて意見を聞いた。
「携帯禁止の布石ねぇ」
「勘ぐりすぎ?」
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