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彼女は彼女を天使と呼んだ(37)

 主将君は口元を戦慄かせ、次いで理絵子を見た。
 キミ デハ、ツリアイ ガ トレナイ。
 衝撃的な彼の認識。
 ゆえに勝手に判ってしまった。ああ罪作りなこの感覚。
 さておき、こういう場合に適切な反応と言葉って何だ。理絵子が解を見いだす前に、彼は周囲の視線から逃げるように立ち上がり、駆け出して行ってしまった。途中、返却本を台車に載せて書架に戻しに来た司書のお姉さんとぶつかり、本が散らばる。お姉さんは驚いて声を上げ、しかし、彼は持ち前の運動神経の良さ故だろう、自らは転ぶこともなく正面玄関から甲州街道へ出て行った。
「壮大な勘違いを?」
 本橋美砂は彼の走り去った先を見ながら訊いた。そのまま、司書のお姉さんが本を拾うのを手伝いに行く。
「ウチの馬鹿が失礼しまして」
「あ、ありがとう」
 お姉さんが頭を下げる。理絵子も手伝いに立つ。
「多分しっかり大誤解。ネコは尻尾踏まれると一生恨むよ」
 理絵子は言った。これも多分、脳内で勝手に憶測が進行する、だろう。
 最も。
 以下テレパシー。
〈告白されたところで……でしょ〉
〈ごめんけどそういう相手じゃない〉
 問題はだ。
 彼がここに残していった、用具の入った巨大なバッグ。
「置いてけ」
「美砂姉ヒドス」
「でも持って行く?持って行くだけ持って行って……ごめんなさい?」
「とりあえず会議が終わるまでは仲間」
「理絵ちゃんヒドス。考える余地は無しなの?」
 本橋美砂は理絵子の目をじっと見た。
「えっ?」
 理絵子は、ハッ、とした。
 確かに、彼の気持ちに対して防波堤を築くことに腐心していたが、彼の気持ちを斟酌したことはない。
 オンナは顔だ……その発言にカチンと来て、ハナから決めつけていた、というのはある。
 それは、私自身の勝手に進行した憶測?
「ウソだよ。手伝う。リアル二人がかりじゃないと持てないこれ」

→次

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