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彼女は彼女を天使と呼んだ(28)

「で?」
 理絵子は首を上へ向けて背後を見、言った級友の顔を天地逆に視界に収め、答えた。
「で……って」
「勝手に人を霊能者にして、今度は無い能者。ってだけでしょ?」
 肯定してもないことをコキ下ろされたところで、否定する必要もない。
「それはそうなんだけどさ。その……うまく言えないけど、何か悔しいんだよ」
 すると田島綾が、
「それは持ち上げる時は能力を捉えて〝スゴイ〟なのに、コキ下ろす時は人格否定を伴っているからだよ。霊能者がダメ人間になって戻ってきた」
「そうそうそれだよ。何でウソツキ呼ばわりになるわけ?」
「さぁ……」
 肯定も否定もしない。ただ、ウソツキの〝ウソ〟に複数の意味が含まれているのは知っている。北村由佳の相談内容に対する答えについてのウソと、自分の能力に対するウソだ。つまり、〝見込みがある〟という霊能女子の答えに対して、理絵子は何も言わなかった。これがウソだし、犬猫レベルの霊能とウワサの霊能とのレベル差のウソ。更に言えば犬猫レベルなので〝見込み〟を見抜けなかった。そんな論理になっている。
「私が何も気にしなければ何も起こらない。と、思うんだけど、だめ?」
 理絵子は頭の上の友人に言った。
「だめ」
 言ったのは田島綾。
「あんたと付き合ってる私らまで否定された気持ちになってムカつく。てかさ、あんた本当に霊能者じゃないの?」
 親しい友人からのその質問は、カクテルパーティ効果なのか、教室中に充分聞こえる音量となって広がり、全てのお喋りがピタリと止まって目線が理絵子らに集まった。

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