彼女は彼女を天使と呼んだ(51)
しかしそんな重要な内容なら家に電話があっても。……って、携帯電話どうした自分。
記憶は忽然と言っていいほど無いが、何やったかの想像は付く。〝彼〟からの電話を恐れて電源を切ったのだ。
むろん固定電話もあり、桜井優子は番号を知るが、それはそれで、仕事の邪魔だと電話線を引っこ抜く母親が一人いる。
「今日は寝坊しちゃって」
「お前と一緒にいられるならその方がいい。遅刻でセンコーが何か言ったらぶっ飛ばす」
セーラー服の騎士に守られて理絵子が学校に到着すると、クラスのみんなとピンチヒッター担任の竹内(たけうち)という女先生と、なるほど下駄箱で勢揃い。
「桜井さんありがとう。黒野さん何ともないのね」
「ええ、私自身は単なる寝坊です……あの、聞いたけど、とりあえずみんなどうもありがとう」
心配してくれたことに対して頭を下げる。
対し誰からも言葉無し。その背後の躊躇。モノ言いたげで、しかし言う言葉が見つからない。
担任竹内含め、みんなのぎこちなさもどかしさ。
「教室に原因が?」
「まぁ……」
「行っても?」
「ええ……」
見せるのは気が進まない。であるのは火を見るより明らか。
先立って歩く自分にみんなの方が距離を置いて付いてくる。対し桜井優子は常に傍ら。
そして、教室を覗くや絶句。
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