彼女は彼女を天使と呼んだ(61)
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赤。それがまず得たイメージ。
激しい怒り、及び嫉妬心。
突き刺して来るビームのような目線。
真っ直ぐに自分を見る髪の長い少女がそこにあった。
美人だが近寄りがたい……但し、それは本人自身が振るまいで醸す演出。
演出がもたらす気位は確かに天使と表現して良いかも知れぬ。でも、理絵子は、同じ天使なら、きたのじゅんこが描くようなタイプの方が好きだ。
「まぁご挨拶なこと、黒野理絵子さん」
その言葉、つまり自分の意志を読んだわけだ。なるほどそれなりに〝使う〟らしい。
「クラスが総出でマット持って待機。ってのは想定外だったですか?天使さん」
理絵子はそう応じた。思惟を読まれぬようロックも出来るが、自分を勝手に霊能者に祭り上げたのは彼女であって、思い通りに行動してやる理由はどこにもない。
「汚い娘」
〝天使〟は短く罵詈を寄越した。
「普通のフリして、隠れて霊能使って、自分だけいい目見ようとして」
それが北村由佳に対するこれ見よがしの発言であることは論をまたないであろう。
意図するところがあるならテレパシーで放り込んでくれれば一瞬で事足りるのだから。
私が霊能者だと思うなら。
「事件解決した程度で霊能者気取りとはおめでたい」
〝天使〟は言って寄越し、自らのセーラーの胸元に手を入れると、首から下げているロザリオを引きちぎり、その十字架の先端を理絵子に向けた。
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