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彼女は彼女を天使と呼んだ(58)

 優子は携帯を閉じた。確かに、知ってる者がやっかんでリアルに展開、実力行使、なら、説明は付く。
 ただ、誰が。そういえば黒板のあれを見ても超感覚は何も言って寄越さなかった。様相に絶句して思考が止まったから、というのはある。あるが。
 物にはその人がその時込めた思いが残る。残留思念とか石ノ森正太郎の古いマンガにあった。それは自分も感じられるし、それこそ幽霊事件ではそうやって記憶の断片を探した。あんな死ねで埋め尽くす憎悪なら、それはいっそう強いはず。
 でも、何もなかった。
 それは超常能力で〝消した〟か。さもなくば例えば、催眠術というか一種のトランス状態で意識無く取った行動か。
 どちらにせよ心への働きかけ……それこそ思想コントロールではないか。
 気配。
 次いで足音がし、皆の目がそちらに向いた。
 多目的室の戸口に立つのは北村由佳。
 理絵子は気付く。さっき教室に彼女がいなかったこと。
 及び、彼女の手に握られ、入り放題の北風に揺れる白いりぼん。
 理絵子は判った。
 糸山が、彼女に、声を掛ける。
「おい北村。黒野が大変なんだ。心当たりないか?」
 それは余りにストレートだ。理絵子は思った。
 思った通りであったようで、北村由佳は驚かされた猫のように、身を翻して走り出す。
 その行動はクラスの皆には唐突であろう。今、理由を理解できるのは自分だけだ。

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