彼女は彼女を天使と呼んだ(66)
理絵子は小首を傾げる。
「優等生ぶってるって?」
「癪に障るんだよ!」
恫喝的に怒鳴り、再び十字架先端を向けて来る。その言動には自分をどうにかして、或いはなりふり構わず〝天使様には降参です〟と言わせたい、そんな意図を伺わせる。
自分の凄さをアピールしたい。
ケンカ先に売った……理絵子の挑戦受けて立ってやるという心理のなせる自己解釈。
そういうことにしときましょう。結構なこと。
その調子で全部言え。
「何で……何でお前は違うんだ?私だって全部判ってる。でもみんなにはお前はイヤだって言われる」
この娘は力と自我を制御できていない。その台詞から判ったのはそれ。
『しかも、自分で覗きに行くならまだしも、押しつけられることすらある。知りたくもないのに勝手に判ってしまう』
これは超感覚に対する理絵子の認識であり以前に書いた。
立場を逆転する。
『しかも、自分から教えたならまだしも、引き抜かれることすらある。教えたくもないのに勝手に知られている』
……何で教えてもいないのに知ってるの?私の全てを覗いてるの?やられた側の認識は当然そうなる。
「なのに、お前は何もないのにいつもみんなとニコニコ。この部屋の事件だって本当は私が解決するはずだったんだ。ここに居ることも判ってたんだ。霊を何度も呼び出したよ。でも出てこなかった。なのにもうここに彼女はいなくて、お前が解決したことになってる。お前本当に彼女と話したのか?何で彼女はお前とは話しをしたんだ?」
〝天使〟は一気に喋った。要するにそれが本音らしい。ただ、気持ちが入り組んでいるので文章がややこしい。
テレパシーで放り込んでくれればいい物を。まとめるとこうだ。
天使の能力は理絵子より高い(高いはず。或いは高くあるべき)。
従って好意と尊敬を集め、幽霊事件を解決するのも本来自分の役目。
なのに何でお前?ただ、薄々感づいている事実が一つあり、それは彼女にとって最も認めたくないことで、認識するのが怖い。
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