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ブリリアント・ハート【16】

「やめ…」
「こらっ!」
 レムリアの声を、胴太い男の声が上回った。
 さっきの男性教諭である。少年は慌てて動作を止め、逆を向こうと身体をひねった。
 と同時に、レムリアの指先が少年の方を向いていた。
 ズボンのベルトが切れてしまう。
 更にずりさがったズボンを自ら踏みつけ、
 アニメキャラクターのイラストが入った、ブリーフの尻が丸出し。
 ずっこける。小学生達の笑い声が少年の背中に降りかかる。
 少年は戦意喪失し、ズボンを両手で支えながら、一目散に逃走した。
 ゲーム機は男の子の手に戻った。
「ありがとう」
 男の子はぺこっと頭を下げ、小走りに公園へ戻った。
「みんなありがとね。いいパス回しだった」
 レムリアは言った。
 これに洞察の表情を見せたのが当のバスケチーム。
 何か掴んだのだとレムリアは知った。チームのメンバーが互いの顔を見合わせる。
「ちょっとやってく?」
「うん。今のイイ感じ、イイ感じだったよね」
「やってみよう。お姉さんありがとう」
 主将だろうか、体格のがっちりした少年が言い、校門の中へと走って行く。
 通り過ぎるバスケチームを見送る男性教諭。
「何かよく判らんが解決を見たのかな?」
「ええ。丸く収まりました」
 レムリアは言った。
「ならいいか。はい、これ」
 教諭はメモ書きをレムリアに渡した。
 あすか…ちゃん。確かにここの子だ。
「メガネをかけた真面目そうな…」
「そうそう」
 男性教諭は頷いた。やはり正しい。
「どうもお手数をおかけしました」
 レムリアは頭を下げる。
「いやいや。そんな頭を下げられるような…しかし何か不思議だな。本物のお姫様とこうしてお話しできるとは」
 男性教諭はちょっと照れた風。
「中身はただのガキんちょですよ。大げさすぎです」
 レムリアは言った。
「そうかね?でも慈善活動で世界を回ってらっしゃる。立派なガキんちょさんだ」
 男性教諭はちょっと笑った。そして何か思いついた風に。
「これって秘密…なんだよね」
 耳打ち。
「今しばらくは」
 レムリアは言った。ご内密にして頂けると有り難い。
「承知した。いや実はあなた結構有名なんだよ。博覧会人気もあって一気に人気も知名度も…。おっと引き留めて申し訳なかった。行ってあげて下さい。彼女、きっととても喜ぶ」
「判りました。では、失礼します」
 レムリアは頭を下げ、辞した。

つづく

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