彼女は彼女を天使と呼んだ(65)
超感覚が勝手にあれこれ情報を集め出していることを意識する。共鳴するように感度が上がっている。まぁ目の前で感度全開で疾駆されればこっちの回路も影響を受けるのだろう。振動が隣へ隣へ移動して行く振り子のオモチャと同じである。
それは、本橋美砂との間で生じる分には楽しいシンパシーなのだが。
ともあれ〝一般人〟はいなくなった、と理絵子は送ってやった。
アンタは特別な存在だ。私がたった今確認した。
全部理解してやるから言いたいこと言え。
理解を得るための衝突。要するにケンカである。
この霊能少女は一度爆発させてやる必要があるのだ。彼女の求める方法で。すなわち、常人の理解の及ばない世界観と言語で。受け止めるのに特別な能力を要する方法で。
それなら、私の担当上等。
「十字架突き立てて解決すると思うなら、やんな。でも肉体傷付けても精神は傷つかない。知ってると思うけど」
「うるさいっ!」
とはいえ感情的に煽るのは解決へ導かないようだ。
「私が憎いと」
話題を変える。本当にケンカかこれ。
「何であんたばっかり、何であんたばっかり。私だって……」
「みんなに色々アドバイスして上げてたんでしょ?」
「お前は何で……」
「仮に私があなたに相談を持ちかけたら、あなた何て言ってくれる?」
その時、少しメタボ入った男性教員が音楽室入り口に姿を見せた。
1組。すなわち天使の担任。しかし当の天使は意識と超絶感覚の全てを理絵子に向けているせいか、感覚とは裏腹に全く気付いていない様子。
頼りすぎると全てが〝霊的〟になってしまい、目と耳が捉える肝心な事実が判らなくなる。良くあることだと行者達は教えてくれた。だから役立てるため以外に使うべきにあらずと。
「その気もないのに答える義理はないね」
〝天使〟はまず言い、次いで挑戦的な笑みを浮かべ、
「まず、その全部知ってますな物言いはやめてから、またおいで」
挑発するように顎をしゃくる。意図はさておき、彼女にとって、このケンカ先に売ったのは彼女であるらしい。で、自分が買ったことになっている。
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