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彼女は彼女を天使と呼んだ(78)

「この場は私にお任せ頂きたく」
 理絵子は教員陣に言った。まぁ最も、この状態で手の出し方を知っている教員がいるとも思えないが。
 自分についての噂が彼らの中で確信に変わると知る。だが、故に自分に任せようという意識が生じていることも知る。
 能力を隠しておくべき期間は去ったのだ。それがどんな変化を意味するかは判らない。
 ただ、今はみんなを守るのみ。
 理絵子はハサミを持った級友と向かい合った。
「やっぱりデキてるじゃないか!」
 級友は糾弾した。その目から、後から後から溢れ出す涙。
 薄紅に染まった涙。血の涙。
「嘘つき……上っ面だけの言葉を並べ立ててみんなを惑わす。先生達に気に入られようとしやがって汚い女。それがお前の正体だよ!」
「ありがとう」
 次第にボリュームの上がる級友に理絵子はそう応じた。
 無論、出鼻をくじいた。
「なに……」
「私に面と向かって悪口言った人いないから。これでいいのかなってずっと疑問だった」
 級友の眉根が吊り上がる。
「その物言いが気に入らねんだよっ!優等生ですって顔しやがって!」
 高千穂と同じだ、と理絵子は知る。すなわちそれが彼女の隠していた本音。だったら。
 理絵子はスッと息を吸う。
「カマトトぶって近づいて、友達ヅラして利用しようと企むよりナンボかマシだろが違うかっ!」
 言葉のナイフを突き刺した。それが理絵子の印象。
「霊能使って何とかしてもらおうなんて、調子いいのはどっちだよ」
 付け加える。すると級友は一転泣き出す。
「黒野さんひどい……」
 強い示唆。同情するな。
「悲劇のヒロインって顔はもううんざりだよ」
 瞬間、
「……!」
 ぎゃぁ、とも、わぁ、とも付かぬ、狂気を孕んだ悲鳴が、北村由佳の口から発せられた。
 その口はまるで、サメか火山の噴火口のようである。赤く、大きく、思わず見つめてしまうほどに開かれる。
 叫びと共に、少女は、ハサミを腰元に携え、ラグビーのタックルよろしく身体ごと理絵子にぶつかってきた。

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