彼女は彼女を天使と呼んだ(62)
神の道を知る読者よ。この扱いに心痛めるを作者は理絵子と共に理解する。
「でも、あんたの野望は私が抑えたよ。クラスメートの恋心を手玉にとってカラスのように掠め取る。私にはお見通し」
〝天使〟が自分に対して何か仕掛けようとしている。
いや、仕掛けようとして、ではない。そういう未然形ではなく、何か事の次第に則って仕掛けている真っ最中と理絵子は知った。
ロザリオ持つ〝天使〟の手が震え出す。冬の北風が入って来るというのに、額に汗が玉をなす。それは必死で自分に念力噛まそうとしたニセ行者を思い出させる。
つまりそういうことらしい。……とりあえず何も感じない。
「あんたが気に食わない」
堪えた物あふれ出すように〝天使〟は言葉の毒を吐いた。
いきなり結論を言って寄越す。託宣的な物言いは……本橋美砂が言っていたのを思い出させる。
対し、理絵子は、まばたきを返すだけ。
ようやく全容を理解する。ただ、〝天使〟は自分の理解に気付いていない。
「なんで……なんで力のある私が……力なんか無いあんたが……ましてや……」
強い怒りが渦巻き、言語中枢の機能に干渉し、まともな言葉にならない。
ただ気持ちは充分すぎるほど届いているので言葉で組み立て直すことが出来る。彼女に取り、霊能者である己れがクラスで疎外される一方、対し理絵子はちやほやされ、あまつさえは霊能者だと自然発生的に噂が立った。
しかも自分は〝変〟で。理絵子は〝凄い〟で。
それが気に食わないのだ。
特別な存在は自分であるべき。だから〝天使の気位〟なのだ。が、事実はそうした彼女の思惑とはほぼ真逆。
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