彼女は彼女を天使と呼んだ(67)
「高千穂(たかちほ)、いい加減にしないか」
良いのか悪いのか、そのタイミングでメタボ教師が制止の言を発した。
確かにこの天使……高千穂という名らしい……の台詞は、常人には理解不能であろう。メタボ氏はそれを正常限界と見、自分に迷惑と考え、動いてくれたのだ。
天使高千穂は振り返った。まるでねじられたバネが跳ね返るような唐突さだ。
対し腕組みしていたメタボ氏は、呆れたように溜め息。
またか、いい加減にしろ。そんな氏の意志。彼女のことをほとほと扱いあぐねているらしい。
それは当然、天使高千穂の真意、自分の特別性を認めて欲しいとは逆の認識。
「先生は何も知らない……」
諦念と共に天使高千穂は呟く。彼女にとって〝一般人〟メタボ担任の介入は歓迎ではなかったようだ。強い排除の意志が彼女から発せられるのを、理絵子は感じた。
その意志が、メタボ担任の発した意志、いい加減にしろと衝突する。
波と波の衝突。生じた衝撃波を通じ、理絵子はメタボ氏の意志をキャッチしてしまう。それはクラスで折々生じていた彼女にまつわるトラブル。
彼女は自分の特別性を知らしめたかった。その意志余りに強いが故に、相手の気持ちを考えず、知っていること、判っていることを全部口にしてしまった……。
理絵子は自分の得たその認識を、意図して天使高千穂の意識に送り込んでみた。
アンタのやり方は人を傷つける。
「あーっ!」
電撃を食らったような天使高千穂の尾を引く声と胴震い。
しまった切れる。理絵子は自分の失敗を認識した。
例えるなら放り込む電波と、その内容……あんたの認識は間違い……の衝撃が強すぎたのだ。
自分が唐突に頭の中で大声を出して否定した。それが天使高千穂の認識。
神経回路が保護でヒューズを飛ばす。
すなわち。
ロザリオが天使高千穂の手から落ちる。
そして糸を切られたマリオネットのように、天使の少女は崩れ、床に潰えた。
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