« 彼女は彼女を天使と呼んだ(66) | トップページ | ブリリアント・ハート【14】 »

2009年2月10日 (火)

彼女は彼女を天使と呼んだ(67)

「高千穂(たかちほ)、いい加減にしないか」
 良いのか悪いのか、そのタイミングでメタボ教師が制止の言を発した。
 確かにこの天使……高千穂という名らしい……の台詞は、常人には理解不能であろう。メタボ氏はそれを正常限界と見、自分に迷惑と考え、動いてくれたのだ。
 天使高千穂は振り返った。まるでねじられたバネが跳ね返るような唐突さだ。
 対し腕組みしていたメタボ氏は、呆れたように溜め息。
 またか、いい加減にしろ。そんな氏の意志。彼女のことをほとほと扱いあぐねているらしい。
 それは当然、天使高千穂の真意、自分の特別性を認めて欲しいとは逆の認識。
「先生は何も知らない……」
 諦念と共に天使高千穂は呟く。彼女にとって〝一般人〟メタボ担任の介入は歓迎ではなかったようだ。強い排除の意志が彼女から発せられるのを、理絵子は感じた。
 その意志が、メタボ担任の発した意志、いい加減にしろと衝突する。
 波と波の衝突。生じた衝撃波を通じ、理絵子はメタボ氏の意志をキャッチしてしまう。それはクラスで折々生じていた彼女にまつわるトラブル。
 彼女は自分の特別性を知らしめたかった。その意志余りに強いが故に、相手の気持ちを考えず、知っていること、判っていることを全部口にしてしまった……。
 理絵子は自分の得たその認識を、意図して天使高千穂の意識に送り込んでみた。
 アンタのやり方は人を傷つける。
「あーっ!」
 電撃を食らったような天使高千穂の尾を引く声と胴震い。
 しまった切れる。理絵子は自分の失敗を認識した。
 例えるなら放り込む電波と、その内容……あんたの認識は間違い……の衝撃が強すぎたのだ。
 自分が唐突に頭の中で大声を出して否定した。それが天使高千穂の認識。
 神経回路が保護でヒューズを飛ばす。
 すなわち。
 ロザリオが天使高千穂の手から落ちる。
 そして糸を切られたマリオネットのように、天使の少女は崩れ、床に潰えた。

→次

|

« 彼女は彼女を天使と呼んだ(66) | トップページ | ブリリアント・ハート【14】 »

小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 彼女は彼女を天使と呼んだ(67):

« 彼女は彼女を天使と呼んだ(66) | トップページ | ブリリアント・ハート【14】 »