2021年9月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

最近のトラックバック

めーるぼっくす

無料ブログはココログ

« 彼女は彼女を天使と呼んだ(105) | トップページ | 彼女は彼女を天使と呼んだ(106) »

【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【19】

「わかったよ」
 私の声を遮って、ゆたか君は不満げ。
「一つにするよ」
 オオジョロウグモが作業を再開します。少し書きましたが、ジョロウグモの糸は、集めれば魚が捕れる網になるほど丈夫です。
 大きなランドセルのように、腕を通せる輪を付けて、荷物が出来上がりました。
〈持てるかな男の子〉
 オオジョロウグモがするすると降りてきて、ゆたか君の背中に糸玉をあてがいます。ゆたか君が輪に腕を通して出来上がり。
「なんかゲームの主人公みたいだ」
 ああなるほど。ゆたか君の言葉に私はふっと納得しました。彼はここを単純に〝クモの国〟と捉えています。異次元・異世界なのですが何の抵抗も持っていません。ここは何処、家へ帰してと言いません。
 その理由がこれということ。もちろん、〝逃げたい〟結果としてここへ来たというのはあるでしょうけど。
 出発準備完了。
〈妖精の君〉
 コバルトブルーが私を呼びました。
「はい」
〈今一度確認しておくが、古き伝えにより決してあなたは手を出してはならない。ただ、言伝のみは許される〉
「判りました。してどの方向でしょうか」
〈この山を登るのだ〉
 先にも書きましたが、アミシノは山裾にあります。その山を登って行け。
 見上げる山は上に行くほど坂が急になり、頂上は雲の中。
「これ、歩いて登るのか?普通はどうしているんだ?」
〈いつもは、ムカデさんが来てくれていました〉
 オオジョロウグモが言いました。
 妖精は、言伝のみは許される。
〈……はい、私を呼ぶのはどちらさまでしょう〉
 〝近くに糸運びをしていたムカデさんはいますか?〟の問いに対する答えがこれ。
 言伝。すなわちテレパシー。
 用件を伝えます。
〈山登りだけならいいでしょう。でもそこから先はお断り〉
〈構いません。そこまで男の子を一人〉
〈判りました〉
〈妖精の君、あなたは狡くていらっしゃる〉
〈いいえ、何か乗りたいというのは彼のアイディア〉
 程なく、地鳴りのような響きが聞こえて来、やはり巨大なサイズのムカデが森の中から歩いてきました。

つづく

« 彼女は彼女を天使と呼んだ(105) | トップページ | 彼女は彼女を天使と呼んだ(106) »

小説」カテゴリの記事

小説・妖精エウリーシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【19】:

« 彼女は彼女を天使と呼んだ(105) | トップページ | 彼女は彼女を天使と呼んだ(106) »