ブリリアント・ハート【18】
「ひ、姫様!」
あすかちゃんは苦労して、それだけ絞り出した。
レムリアは頷く。そして彼女が、あすかちゃんが、決して明るく楽しい学校生活を送っているわけではない、と感じ取る。但しその認識は決して“特殊感覚”で読み取ったわけではない。物腰と雰囲気からそう感じただけ。
…人付き合いが少ない気がしたのだ。
「ど、どうして…」
「お答えしてないから。あなたの質問に」
「え、でも、その…」
しどろもどろ。
驚かせてしまったか、とレムリアは思う。でも文書や電話では“真偽”の点で多分疑いを持たれる。
「あのう…」
母親が口を挟んだ。他の奥さん達が驚愕の表情を作っており、自分を見ている。
まぁ、会話の内容から自分が何者か明白であろう。そして、状態から、“お忍びで出てきた”と察したようである。奥様方3人で人垣を作ってくれる。
「…よろしかったら、お入りになりません?その、お姫様」
母親は階段の方を手で示した。こちらへどうぞ、の意。
「そうよそうよ。ここじゃ見られちゃうよ」
「いいなぁ、何か映画みたい」
奥さん達が付け加える。
言うそばからバイクが1台行き過ぎる。確かに、ここにいるのは全てぶちこわしに繋がる可能性が高い。
「ジイは待っておりますので」
高坂運転手が笑顔を見せる。
「こういう時は遠慮しちゃだめ」
奥さんの一人がいい、背中を押した。
「そうそう、さぁ、行って行って。私たちがここで見張っておく」
「あ、はぁ、では…」
もう一人にも背中を押され、レムリアは階段を上がる。
205号室。母親が恐縮の表情で鉄扉を開く。
「ごめんなさいね、掃除も何もしてないから。汚くて…」
「いいえ申し訳ないです。こちらこそ、突然…」
レムリアは頭を下げ、お邪魔する。一旦座して靴を揃えて向きを変え、立ち上がって室内へ。
「…本当に日本人じゃないの?…ですか?」
その仕草を見て母親は言った。確かに一連の動作、外見、言語の面からすれば、彼女が日本人じゃないという方が疑義を招く。
「ええ。最も、先祖は東アジアの出なんですけどね」
「そういうこと…。さぁ、座ってらして。お茶でも出すわ。あすか、用事があるのはあなたでしょう。何してるのそんなところで」
(つづく)
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