彼女は彼女を天使と呼んだ(102)
もっと言えば、ネットイコール悪、および、にじみ出る〝学生は黙って従え〟。
固定観念、既成概念、先入観。
理絵子が把握した認識の段丘は2段だ。しかも、どっちも海溝型大地震で作られた第1級の高さ。
「君はどこの学校かね」
眉間にしわを寄せて訊いてくる。突然の話題変更には当然底意を感じるが、根本的に判ってないのは相手であるからして、論破できる自信はある。そして、論破しないと、この〝作戦〟の実証にならない。
理絵子は、自分の机に置かれた、三角アクリル板の名札を、氏に向けてやった。
どこの誰、まで言う必要はあるまい。女の子が教頭一人警察送りにした話、この辺の連中が知らないはずがない。最も、この街の中学30校中、女子の制服がセーラーなのは2校だけであって、わざわざ名札を見ないと名前ワカランというのも失礼な話と思うが。
「君の学校は長髪の場合三つ編みにするんじゃないのかね?」
そっち突っ込んだか。てか、そういうことは知っているのか。
「義務果たさず権利主張するのは感心せんな」
勝ち誇ったように。
それ、私に恥掻かせようとしてるんじゃないの?
すると、
「似合ってればいいんじゃないすか?女の子だし」
シレッと言って味方してくれたのは健太君。
加えて、夕暮れ早い冬の西日がブラインドの隙間から差し込み、ポニーテールを結ぶ黄色いりぼんの黄金きらり。
織り込んだ髪の毛は、お守りではなく。
この手の事件で命を絶った仲間のために。
こんな、こんなおざなりでテキトーな〝臭い物に蓋〟で片付けられてたまるか。
「何という学校だ!」
健太君の台詞に、白髪老眼鏡氏は大げさなアクションで驚いてみせる。そっちから糾弾してウヤムヤという作戦ですか?
そうは行かない。
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