彼女は彼女を天使と呼んだ(101)
「何が言いたいのかね」
白髪老眼鏡氏は理絵子の言葉を遮り、語尾を荒げた。その口調、表情に見せる苛立ちは、故意にも取れる。すなわち、力をちらつかせた脅し。
こんな資料メールでばらまけ。
「何か言ったかね?」
ではなくて。
「ググりゃ出てくるってことです」
白髪老眼鏡氏。きょとん。
意味が判っていない。
これに生徒達はそこここでクスクス笑い。
対し白髪老眼鏡氏は、今、理解できていないのは自分だけ。という雰囲気を把握……
したのだろうか。
もう少し具体的にしてみる。
「自分の本名、そして〝死ね〟。二つ並べてネットで検索。ワラワラ出てくる自分の悪口。その状態でも見るな、それで済むことでしょうか」
「そうやって相手にするからつけあがるんだ」
「そうでしょうか?」
「だから、君は、さっきから、一体、何を言いたいのかね?」
細かく千切り、強く言う言葉に感じる、二重の苛立ち。
せっかく終わりにこぎ着けたのに。
及び、自分の発言が本当に理解不能。
でも今、主導権を与えてはならない。
「それが世界中に公開されているとしても、相手にするな放っておけということですか。それと、腹立つ相手に恥をかかせてやろうと思う心理は異常でしょうか。心理自体は当然で、子どもの頃から誰もがやること。ただ、この歳になったからにはもういけない。そう理解することこそ重要と考えますが」
生徒達がざわつき始める。明らかに会話が噛み合っていない。世界観について大きな認識のズレがあると誰にでも判る。
ネット社会への理解。思春期と白髪期(!)との乖離。
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