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彼女は彼女を天使と呼んだ(105)

「ケータイ取り上げて見れなくなっても、書かれた悪口グーグルのキャッシュとかログ残ってるんですけどね。中の人にメールして誰か消してくれるんですかね。それに、禁止と言っても、手のひらの窓取り上げても、ネット接続手段だって十指余るほどあります。ネット経由の対戦機能を備えたゲームやネットにつないだデジタルテレビ。フィルタリングのソフト作って撒きますか?家庭訪問してブックマークチェックしますか。でもその最中にアホ死ねって死体写真付きのメール叩き込まれるのがオチです。本人が見なくても裏では動き続けて広がるんです。光あれば影。光がダメならダイヤルアップ。再三失礼ですが、ネット接続されてますか?」
 もう、全部言ってやった。
「会は終わりだ」
 白髪老眼鏡氏の声が会議室に響く。早口で上ずったトーンには投げやりすら感じる。ただ、誰が見ても白髪老眼鏡氏の職権乱用であり、かつ、結論は明らかに無意味だ。
 それが証拠に、オブザーバとして参加した校長代表という3人は、司会に加勢して自分に何か言うわけでなく。ノートパソコン広げた議事録担当のお姉さんも、書くべきかどうか、困った表情。
 そして何より、他の生徒達が立とうとしない。理絵子から目を背けていた彼らが、この会の〝本質〟に気づき、自分の味方になりつつあると肌で感じる。
 対し氏は〝電源スイッチの長押し〟を知らないようだ。
 或いはデスクトップに爆弾でも出たか。リンゴかじったら血が出そうだが。
 そこで矢面に立ったのは健太君。
「まぁそう脊髄反射すんなや。俺らアンタらの思惑通りにならなくて悪かったよ。でも俺ら携帯取られたら激しく困る。だから想定問答通りのイルカにはならない。そんだけさ」
 その台詞に、彼は成長した、と理絵子はまず感じた。彼には自分を救ったという自負と自信がある。今彼を動かしているのは、その自信を礎とするナイト精神。
 男子三日会わずんば、とはこのことか。
 理絵子は努めて穏やかな口調で、
「私の髪の違反は学校側自体、百も承知です。でもこれは先ほどの、遺憾です、が元になっています。あの事件で私たちは生徒教員問わずみんな傷付きました。あの学校の生徒だ、というだけで白い目で見られ、教員というだけで罪人と思われたんです。でも教育委員会様は何もサポートしていただけない。
 私たちは結束するより他ありませんでした。教師が上で生徒が下って構図でなくて、良い学校一緒に作るにはどうすればいいかって模索を始めたんです。家は親、学校は教員、通学途中がPTA。それがシンプルでしょって。その上で、言いたいことぜんぶ言えと言ってもらってます。お互い意見をぶつけ合って落としどころ探そうって。一般論ですが、家族が互いに言いたいこと言えなくなったらその家族終わりですよね。発展で学校も同じだろうって。クラスが家族のように居心地のいい空間であったら」

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