ブリリアント・ハート【20】
「そんなことないよ。あのままではあなたに失礼だもの。質問は、『どうしてそこまで出来るの?』だったよね」
レムリアは確認した。
「…はい」
あすかちゃんが頷く。消え入りそうな声。
レムリアは彼女の目を見て。
「お答えします。それは、出来る範囲で出来るだけのことを、と思って動いたら、こうなった、です。私みたいな小娘でも、動き出せばけっこう行けてんじゃん、ということ」
その言い回しは、少なからず母娘を驚かせたようである。
内容的に、砕けた言葉遣いに。
“お姫様”が“じゃん”、その肩の力を抜く効果をレムリアは良く心得ている。
「…動いたら」
あすかちゃんは反芻した。即座に応答があるあたり、おずおずおどおどという感じはなくなってきたようだ。砕けた言葉が奏功したか。
「そう、動いたの。恵まれた環境にいて、実情を目の当たりにして、このまま“のほほん”と過ごしていいのかと思った。誰かのためになりなさいという家訓もあった。そこで私は動いた。まず資格をきちんと得ようとした。それは勉強次第だから楽だし。少なくとも勉強して知識を得る程度なら、誰かに迷惑が掛かるわけじゃないから」
レムリアは言った。家訓が、その力を有するがゆえに、という理由からであるのは、論を俟たないであろう。
「失敗したら?」
あすかちゃんが問うた。その言葉に、レムリアは全てを知り、頷いた。
失敗への恐怖、否定され傷つく事への恐れ。
彼女の気弱さ…行動を制限する中枢である。恐らく彼女は生来その性質を持っており、色々言われていたのだろう。しかしそれが逆にプレッシャーとして働き、余計に、失敗して何か言われることを恐れるようになってしまった。
そんな彼女が全く位相を異にする自分に興味を持った。判らないではない(※レムリアは月の満ち欠けが自分に大きく影響する関係で、月の丸みの程度を角度になぞらえ、位相という言葉で表すことを知っており、その概念を理解している)。
母親がロールケーキを持ってきた。
(つづく)
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