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彼女は彼女を天使と呼んだ(94)

「高千穂……黒野……おい……」
「女の秘密」
 理絵子はひとことそう言った。
「右に同じく」
 高千穂登与が言葉を繋ぎ、
 微笑を浮かべる。元々整った顔立ちの娘である。微笑んだらそれこそ天使。
「秘密って……おい、あの……それだけか?」
 メタボ氏は返す言葉無く、少女二人と空き家になった準備室を交互に見るのみ。
 理絵子は登与と手を繋ぎ、メタボ氏の脇をすり抜け、部屋から出る。
 廊下には担任竹内と、クラスメート達に付き添われた北村由佳。
 かしこまったような顔をしていたが、二人が出てきたと知り顔を上げ、二人が手を繋いでいると知りハッと目を見開く。
 彼女を襲った衝撃が見て取れる。対立していた霊能者二人が手を取り合うことの意味。
 取り残された自分、仲間はずれ。
 孤独、孤立。
 表情の曇る北村由佳に、高千穂登与は微笑んで見せた。
「ごめんなさい。力になれなくて」
 彼女はまず言った。
「あなたの願いは、人の心を変えること。でもね、人の心が判ることと、人の心が変わることは違うんだ。『か』の字と『わ』の字が入れ替わっただけなんだけどね。私はその辺思い上がってた。あなたや、みんなを振り回した。ごめんなさい」
 高千穂登与の告白に、北村由佳はそこでまず理絵子を見た。彼女の関心が再び、〝理絵子と健太の関係〟に向いたことを、理絵子……
 と、高千穂登与は知った。
 彼女の関心は何があろうとそこへ帰着する。文字通りラブいずブラインド。
 理絵子は音もなくため息。
 判った。同様に振り回したことを詫びろとは言わない。アナタにはまず、その必要性を知る機会が必要だ。
「健太君いろいろとありがとう」
 理絵子は斜め後ろの彼に向かってさらりと言った。

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