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彼女は彼女を天使と呼んだ(99)

「本当に素敵だと思うのは、弱きに味方して強くすることだ。『弱きを助け強きをくじく』ってな。最近じゃ……」
 父親はプロ野球阪神球団を再生させた野球人の名を挙げ、
「その引き受けた理由のセリフが有名だけどな。オレが警察官を選んだ理由も要するに同じだ」
 父親は少し熱っぽくそう言った。
 それは男性原理の一つであろう。顕在化した英雄願望の一側面だ。だが、父の言葉に理絵子が真っ先に思い浮かべたのは、正義のヒーローではなく、自分のりぼんを髪にした遙かなる聖戦女。
 あの方は敗者を魂の戦士としてオーディンの元へ導く。逆に言うと、勝利者にオーディンの元へ参じる権利はない。
 その点で自分たち学級委員は一般に〝勝ち組〟と見られる。父親の言う通りアンナ・カレーニナの冒頭組だ。
 だったらば?
「あのさ……」
 理絵子は健太君に発呼した。

24

 ホワイトボードには、大文字がマルで囲まれカルトゥーシュ。
〝ケータイは 見ない書かない 持って行かない〟
 既に標語。
 アホか。
「えーでは、教育委員会からの提案を生徒諸君が了承したものとし、携帯電話やパソコンからのこうした掲示板の閲覧と書き込みを禁止し……」
 市教委から派遣の司会役、白髪老眼鏡の男性が言いかけたところで、理絵子は噤んでいた口を開いた。
「異議があります」
 挙手して返ってきたのは、白髪老眼鏡氏のきつい目線。

→次

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