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彼女は彼女を天使と呼んだ(98)

 明らかに矛盾である。だが、それが実態ではないのか。傷つきやすい世代が尚のこと傷つきやすくなった。対し情報は過多に過ぎる。傷つける針は見えないほど小さく、しかしその先端は細く鋭く尖って奥深くへ突き刺さり、量も多い。なのに、オトナの世代はその情報とは少し離れた距離にあり、更には目立つナイフばかりを気にして針の鋭さに気付かない。
 となると、極めて超高感度の心のラジオ、黒野理絵子。修験者の声を聞き、意図を解したのは物心ついてから。
 その前はどうしていたのか。
 母親に尋ねたら。
「お前の役目は泣いている子に力を与えることだ。泣いてる子を見つけたら、でも君はこんだけ凄いんだよって言ってあげなさいって。お前の力はそれを見つけるためのものだって。そう教えた。そうか、さすがに憶えてないか。幼稚園に入る時の話だからねぇ」
 それは、今でもしていること。つまりは以来の習い性か。
 無論、その動きを学校に展開するのは問題解決の一つの道だろう。でも『あの子の良いところを、みんなで一つ一つ紙に書いてください』……中学生のやることだろうか。それはむしろ今の自分のやり方で活かすべきであろう。自分じゃ見えない背中の翼を、オフライン(!)で教えるのだ。
 それよりこの時代有効なのは、多分、超然性。裏オンライン(!)で何書かれようと超然としていられる心のタフネス。すなわち自信……何言われようとオレはオレだ……を与える方法。これは結局、幼時体験の必要性を示唆する。
 しかし現代、その必要は確率の支配下にある。すると、幼時体験の無い心は、自分に自信を持ちたい時、英雄が猛獣を狩るように、誰かを傷付けて優位性を確認する。幼時に終わっているべき衝突がなされていないため、思春期にまずそこから出てくるのである。ただ、10年育ったなりの〝知恵〟が働き、その手段は巧妙となる。結果が裏であり、働く力学が勝ち負けだ。勝ちと断じた方に与して、誰かを負けにする。しかも露見しないように。
 〝いじめ〟の構図である。この際、露見を防ぐ知恵は、逆転しないスパイラルを形成する。そのスパイラルはゴルディオンの結び目そのものであり、解くより断ち切る剣が求められる。

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