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彼女は彼女を天使と呼んだ(95)

 顔を見ての改まった、ではなく。
「いや。オマエラが何事もなくて良かったよ」
 彼はさらりと返してのけた。それは期待通りの反応。
 男の反応。
 彼は自分たちを救うことにより、自信を得、結果、男になった。
 このやりとりがいろんな意味で皮肉と事実の幕の内弁当になることは必定だった。
 登与が洞察したと判る。
「人間関係ってまずは知ることから始まると思うのね。相手も、自分自身も」
 登与は言いながら、理絵子と繋いだ手を離し、北村由佳に近づき、その足下に膝を突いた。
「北村さん」
 登与は改まって呼び、顔を見上げた。
「お守りをあげる」
 登与は手のひらから聖女の髪の毛を一本引っ張り出そうとする。すると引っかかり出てこず、尚も引っ張ったら、くるくる丸まって複雑に絡み合った。
 それこそゴルディオンの結び目。
「これを解きなさい」
 登与は丸く絡んだ髪の毛一本を北村由佳に渡した。
 絡みを必然と解したのだ。
「解いたその時、あなたの望みは叶えられる。但し掟が一つ。あなたがそれを解くまでは、あなたはあなたの気持ちを誰にも明かしてはならない。あなたの秘密にしておかねばならない。但し、見つめることのみは許される」
 登与はそれこそ魔術の手ほどきのように、北村由佳に告げた。
「え?」
 唐突の成り行きに北村由佳は問い返した。しかし高千穂登与は何も言わず、絡んだ髪の毛を彼女にしっかりと握らせた。
「うん……わかった」
 北村由佳は手のひらの髪の毛を見、作ったような笑みを見せる。
 理絵子は判ってしまう。それさえ確実ならどうでもいい。そんな彼女の心理。

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