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ブリリアント・ハート【19】

 実は彼女は屋内に入っていない。玄関ドアの前でもじもじしている。
「でも…」
 恥ずかしがり屋さん。
 どれほどの、どれだけの、精一杯の勇気を持って、彼女が自分に質問したのか、レムリアはよく判った。
 来て良かった。あのままにしていたら彼女の勇気は無駄になっていたところ。
「自分の家でしょうがっ!」
 母親が怒鳴る。
 レムリアは小さく笑った。気が弱いというか、繊細な女の子なのだろう。
 …そして多分、それがゆえに誤解を受けている。
 手を差し伸べる。
「あなたの質問、嬉しかった」
 手を差し出し、レムリアは言った。
 果たして彼女は目を円くした。
「一方的に終わるだけかと終わっていたもん。ありがとう。だからきちんとお答えしたい」
「…あ、はい」
 あすかちゃんは…まさかとは思うが…やや揺らめきを帯びた瞳を輝かせ、“帰宅”した。
 レムリアは玄関を上がるあすかちゃんの手を取る。両手を持ってその目を見つめる。
「質問、どうもありがとう」
 レムリアは、改まって、言った。
 彼女にとって何もかもが初めての事態であるとレムリアは察する。同年代の相手に“ありがとう”と言われること。それがなかったからこそ、自信喪失に繋がり、更に気弱になるという悪循環。
 あすかちゃんの手を引いてリビングに入る。母親がティーバッグに湯を注ぎ、ロールケーキをカット中。
「座って下さいね~」
 母親の言葉に腰を下ろす。
 あすかちゃんが向かい側に。
「わざわざ…すいません」
 あすかちゃんはうつむき、小さく言った。そう口にするのにも勇気を要するのだと、レムリアは判ずる。

つづく

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