気付きもしないで【17】
出任せとかではなく、素直に同意の表明。
「え?」
「誰も知らないし、自分を知る人もいない。ただでさえ、知らない世界に飛び込むのは勇気が要ることだからね。男が一人で花屋に入るみたいにね。しかもオレは自分でそう決めたのにそうだった。雪乃ちゃんの場合、自分で選んだんじゃなくて仕向けられたんだ。もっと勇気が要るし、怖いと感じて当然だと思う」
廊下にお茶を持ったお母さん。
「周りに同年代の子がいないでしょ」
出されたお抹茶。
「それにホラ、世間様ではネットいじめとか……そこへご存じのウワサが」
「ああ、聞きました。少なくともオレや成瀬はアホかオマエラ状態です。ただ、触れて回るとかえってムキになって火消しと思われて……だから、学校ではまだ蔓延してます。すいません」
「あら」
「そんな」
母娘から同時に声。
「お気遣い嬉しいです。ありがとうございます」
「いえそんな……自分こそ友達らしいコトしてあげられなくて」
オレはギョッとする羽目になった。
雪乃ちゃんの目に輝くもの。
えーこういう場合何言えばいいんだ?
……成瀬がこーなるのは大抵、ケンカしてオレが手を上げた時で、20分ほどするとオレがオカンにひっぱたかれて目が輝く羽目になって。
「小さい頃が嘘みたい」
雪乃ちゃんは言った。
「男の子は……違うのかなぁ。『お友達になって』『うんいいよ』とかさ。すごく簡単なことだったのに。こんなに苦労かけて」
その言葉に、オレはある可能性の存在に思い至った。
「先生にそう言われた?」
自分で仲良くなれ。そりゃ、受け入れてもらう努力ってのも必要なのかも知れないが。
「見知らぬところに放り込まれて仲良くしなさい。その、『お友達になってね』ってうんいいよって返ってくるのは小学校低学年まででしょ。オレらは大丈夫かなぁってまず心配になる。親やセンセにはひとくくりに〝コドモ〟なのかも知れないけどさ。同じコドモでもつぶらな瞳とニキビでブツブツはチト違うって。多分、成瀬もその辺判ってて、オレ引っ張り込んだんだと思うし」
成瀬は義理で雪乃ちゃんに会いに来たわけではない。一応フォロー。
(つづく)
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