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ブリリアント・ハート【25】

 ここから自転車を隣家へ出し、その敷地を横切ろうというのだ。
「待って」
 レムリアは金網によじ登り、両足で挟むように立ち、そこで自転車の前輪を持ってまず直立させた。
 その状態を保持している間に、あすかちゃんが隣家へ入り、前輪を引き込む。
 後は二人がかり。ガシャガシャ言わせながら自転車に金網を越えさせた。
「ここ、昼間は誰もいないんだ」
 あすかちゃんは言うと、勝手知ったる何とやら。慣れた手つきで、家屋脇の狭い部分をすり抜け、車庫のアコーディオン式門扉を開き、自転車を出した。
 遠くから聞こえてくるパトカーのサイレン多数。ああ高坂さんごめんなさい。
「乗って。駅へ行く」
 あすかちゃんは言い、荷台をぽんぽんと叩いた。
 二人乗りで行くつもりらしい。
「大丈夫?」
「馴れてるから」
 またがってしがみつく。違反だとか危険性だとか、躊躇している時間はあるまい。それに仮に何かあれば、特殊能力が事前にそれと反応するだけの話だ。
「行くよ」
「うん」
 彼女の漕ぎ出しに合わせ、地面を蹴る。40キロは重たいと思うが、駅へは坂を下って行く方向であり、苦労はなさそうだ。
 住宅街を抜け、“造成前なので道だけ通しました”、そんな場所を駆け下る。郊外であり、恐らくそういう場所を選んでいるせいもあろう、交通量は少なく、事故の発生や、発見される危険性などは感じない。
 カーブを曲がり、駅前ショッピングセンターの広告塔が見えてくる。
 来る時は駅に警官がいたわけだが、今は警官もパトカーの姿も見えず、いない様子。高坂さん追跡に駆り出されているのだろうか。
 あすかちゃんは自転車を置き場に収めた。
「ありがとう。あとは…」
「だめ、最後まで。私の方が土地勘があるし…」
 あすかちゃんが協力を申し出る。ここで普段のレムリアであれば、それでも固辞するのが筋である。
 しかし、この流れに置いては、あすかちゃんの協力を得ることにした。理由は、今、彼女は、とても積極的になっているから。更に“任務完遂(みっしょんこんぷりーと)”ともなれば、どんなに自信がつくか。
 携帯電話がレムリアを呼んだ。

つづく

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