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ブリリアント・ハート【23】

 二人分の靴を手に、慄然となるあすかちゃん。
 母親は即座に口に指を当て、“しーっ”とやった。
『警察の者ですが』
 ドア向こうの性急そうな声。
「は~い。少々お待ちを…」
 母親は作った声で答えると、電話台の下から財布を取り出し、紙幣を折りたたみ式の携帯電話に挟んだ。
 電話もろともあすかちゃんに渡す。
「姫様無事に届けるんだよ。何かあったら連絡」
 あすかちゃんは強く頷き、電話をポケットへ収めた。
 レムリアを見、指差して歩き出す。
「こっち」
 レムリアは従い、二人はサッシ窓からベランダへ出た。
 即座に母親がカギを掛ける。
「すいませんお待たせしまして。何でしょう…」
 玄関に向かうであろう母親のしらじらしい声。
「こっち」
 あすかちゃんは隣室ベランダとの間の壁を指差す。そこには“非常時にはここを蹴破って下さい”というステッカーがあり、
 下方に這えば通れる隙間。
 そこを通るとレムリアは判じた。
「ごめんね」
 と、あすかちゃん。姫様にこんなことさせて、というところであろう。
「気にしないで、原因は私だし、こういうの好きだし」
 レムリアはウィンクで応じた。あすかちゃんの表情に安堵の色。
 二人してぺたぺた這う。同じ要領で2部屋通り過ぎる。
 3つ隣の住人は、二人の姿を認めるなり、ベランダの窓を開けた。
 その電話の中村さん。お喋りしていた奥さんのひとりである。
「おいで。姫様はこれ着て。Gパンの上から重ね着。裾はまくってね。バレたら逆に脱いであすかちゃんに。あすかちゃんはこれ渡しておく。算段は運転手さんとしてあるから」
 中村の奥さんは、あすかちゃんにペーパーバッグと自転車のカギを渡し、レムリアには白いレースのカーディガンと、丈の長いブルーのスカートを身に付けるよう指示した。ペーパーバッグはそれらを脱いで収めるためのもの。
 何やらボソボソと声が聞こえる。あすかちゃんの母親と、警官であろう男の声。
 …携帯電話がハンズフリーモードで置いてあるのにレムリアは気付いた。
『確かにこちらに入ったという情報を頂いたんですが』
『存分にお調べ頂いて結構ですよ。先ほど家を空けてましたし、入ったかも知れません、その人』
 しらじらしいのが上手。レムリアは少し笑いながら、着替えを終えた。

つづく

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