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ブリリアント・ハート【24】

 Tシャツ短パンを基本とする身に、カーディガンに長いスカートなんざガラでもないが。
「…かわいい」
 と、あすかちゃん。レムリアは照れた。が、そういう時間は今はない。
「準備OKです」
「じゃ、おいで。靴は持ったままだよ」
 中村の奥さんはレムリアに麦わら帽子を深めにかぶらせ、玄関ドアを開けた。
 3軒向こうの玄関ドアが開いている。
 あすかちゃんのお母さんが顔を出す。
 中村の奥さんと目配せ。
 あすかちゃんちのドアが閉まった。
「行きな!全力疾走」
 力強い囁き声に送られ、二人は廊下を走る。靴を履かずにコンクリートの廊下を走れば、足音はまず立たない。
ひたひたひたひた。
 あすかちゃん宅の前を通過。警官は気付かない。
 そのまま一気に階段を駆け下りる。高坂運転手がおり、指で“OK”のサイン。
 レムリアはタクシーへ向かおうとした。が、高坂運転手は腕で大きく“×”を作り、二人の後方を指差し、犬にでもするように“しっしっ”とやった。
 後方は自転車置き場。そういえばあすかちゃんはカギをもらった。
 二人は意を判じ、自転車置き場へ身を潜めた。
 高坂運転手がアクション映画さながら、アクセルを無闇に吹かしてエンジンを始動し、タイヤをスリップさせながら発進する。
 果たして上方にてドアの開く音。
「あっ!こら待てっ!」
 警官二人がドタドタと階段を下りてくる。
 囮である。高坂運転手は囮として車を出してくれたのだ。
 もちろん、実際レムリアが乗ったとしても、タクシー1台にパトカーわんさでは相手にならぬ。
 この判断は正しい。
 パトカーがサイレンを鳴らしてスタートする。角を曲がり、遠ざかって行くことを音で確認し、二人は靴を履いて自転車を解錠する。
 自転車を出そうとするが、サイレン音のせいか、表には近所の人たちが集まってきた。
「こっち」
 あすかちゃんがアパートの裏を指差す。そこは金網を挟んで隣家の裏手に当たるが。
 彼女は金網のそばまで自転車を引いて行くと、持ち上げて金網の上に載せ掛けた。

つづく

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