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【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【23】

〈生き物は生まれ死ぬ。どこかで生まれ、どこかで死ぬ。ここの風は、その死によって、周りが感じた悲しき思い〉
 その言葉に乗った重々しさ、威厳。
 それは〝イノチ〟の一部始終を幾度も見てきた存在の、
 都度傷付き、ようやく癒える。それを幾度も繰り返して来た心の放つ言葉に似て。
「だから悲しみの風」
〈そうだ〉
 すると、ゆたか君が、
「その風が吹かないってコトは、悲しみが無い……」
〈そうだ。これまでは途切れることなく吹いていた。いつも吹いていたから風に乗って流れれば良かった。悲しいと思ってくれる。その思いが集まり集まり風となり、紡がれた糸を運んだ。それが途切れているわけだよ〉
「死ぬ、という現象が減った……わけではないね。絶滅危惧とか、レッドブックとか、聞いたことあるでしょ」
 私は自問半分、ゆたか君に言いました。現代はいろんな生き物が減っています。
 つまり〝死〟そのものは増えている。
 でも、風は減った。
「悲しみの方が減った?」
 ゆたか君の言葉はゾクッとさせる認識を私に与えました。増えているのは、
「悲しくない死」
 つまり。
「殺すってことか。殺される生き物が増えてるってことか」
 ゆたか君は目を見開きました。
「そういえば聞いたことある。可愛くなくなったから捨てたとか、要らなくなったけど、捨てるよりは殺した方がマシだとか変な話」
〈そういうことなんだろうな。君のクモたちは幸せだ。気持ち悪いと言われているのに愛されている。ああ来た。風が来たぞ〉
 私の超感覚より早く、ムカデが兆候を捉えて言いました。
 風が吹きます。それは悲しみの根源が愛情だからでしょうか、暖かい気流です。
 しかしなるほど弱い。ゆたか君が背中の玉から糸を繰り出したら、それこそクモの子が空を飛ぶので精一杯。しかも長く続かない。
〈糸だけ送るかね?一本二本なら何とかなるだろう。しかし、それだけの糸を運ぶとなると難しい〉
 すると。
「ぼくにいい考えがある」
 ゆたか君は言いました。

つづく

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