ブリリアント・ハート【28】
高架ホームから階段を下りて改札へ。パトカーがおり、警官が台の上に立っているが、行列に対する警備であって、王女某捜索とは無関係。
人波に乗って駅前広場へ。
真新しいアスファルトでそれと判る、急ごしらえのバスターミナルが出来ており、バスは1台。有料バスであるのでコインを用意する。ぞろぞろと乗り込んでいるが全員乗れるか?
立つのは構わないが、乗れないのは少々困る。
停留所の屋根からぶら下がる、電光掲示の発車案内をチラと見る。乗り過ごすと次は30分後。その下に電光ニュースが流れ、王女某の情報を表示。隣の市で目撃情報が複数あり、王女某誘拐容疑でタクシーを追跡したが、車は運転手ひとりのみ…。取り調べると共に、引き続き周辺を捜索中…。
「ああごめんなさい」
「え?」
レムリアの言葉に、あすかちゃんが目を向けた。
「いや、ううん、ニュース見ただけ。大丈夫だってこと」
「…自転車で正解だったわけだね」
あすかちゃんも同じニュースを見て言った。
行列が動いたのでそれ以上は判らない。最も、新たな動きがあれば東京から電話が来よう。
バスは順次客を飲み込んで行く。観光バスタイプであり、ドアは運転席横の1カ所のみ。座席は多いが、立つには狭い。
席が埋まる。立ち客が後方に順次動いて行く。
二人の前で、ドアの一杯いっぱいまで立ち客で埋まった。
後方には自分たち含めまだ列が続いている。
乗れないのか。
運転手…若い男性に目で頼む(!)。すると運転手はミラーで、次いで立ち上がって身体をねじり、車内を見た。
『恐れ入ります。もう少々お詰め願えますでしょうか。また、本日は混雑しておりますので、補助席のご利用はご遠慮下さい。一人でも多くのお客様がご乗車頂けるよう、ご協力をお願いします。乗車時間は15分ほどです』
マイクで車内放送すると、乗客がごそっと動き、ドア前に空間が出来た。
(つづく)
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