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2009年6月15日 (月)

気付きもしないで【22】

「町田君の悪口だけは言わなかったからね。ショックなんでしょ」
 どこからかそんな声。
「わかったよ」
 オレはまず言った。
 矢部が真っ赤な目でオレを見る。
 とっちめてもいいのだが、それで女の子一人村八分になったとしたら。
 オレの脳裏で雪乃ちゃんの笑顔が曇る。
「矢部一人に責任おっかぶせるのは簡単だけどさ」
 オレはいつの間にか来ていて事態を見ていた、この2クラスの担任も含めて言った。
「言われるままに根も葉もないこと信じて、ウワサにしてたオレら全員にそれなりの責任があんじゃね?」

 月曜日。
 1輛こっきりのディーゼル列車がプラットホームへと入ってくる。
 窓際の彼女は、こちらに目をやり立ち上がろうとし、
 その目が、真ん丸に見開かれるのが、手に取るように見えた。
 列車のドアが開いた。
「いえーい!」
 オレ達は一斉に声を上げて拍手で迎えた。
 驚き見回す彼女。それは作戦が成功したという証明。彼女が見ているのは本校の2クラス全員の姿と、
 飾れるだけ飾った、鉢植えの花。
「あ、あの……」
「待ってたよ」
オレと成瀬は進み出て言った。
「これ……」
「花いっぱいで迎えましょう作戦。改めまして本校へようこそ。これが用意した最後の一鉢」
 オレは言い、後ろ手に持っていた鉢植えを彼女に渡した。
「ランタナ」
 彼女は言い当て、そっと笑った。
 ランタナ。花の姿と付き方はアジサイに似て。ただ咲く花は色とりどり。図鑑によればピンクからオレンジから、一つの茎からいろんな花が出てくる。そのためだろう、和名を〝七変化〟。ちなみに、オレから彼女に手渡したのは、ピンクと、黄色と、オレンジ。
「合意・協力」
 古淵さんは言い。
「確かな計画性」
 成瀬が付け加える。二人が言ったのは、当然、ランタナの花言葉。

次回・最終回

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