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ブリリアント・ハート【34】

「おーい待ってくれ!」
 ガイド氏が声を張り上げた。
 その声が届いたのだろう。バス停にいた別のガイドが、発車せんとするバスに向かって何事か叫ぶ。
 バスがガクンと停止。
 バス停のガイドが二人を見つけて手招き。
「ありがとうございます!」
 二人はガイド氏に頭を下げ、走った。
 バス車中からの視線を感じながら乗り場に駆け込む。
「すいませんでした」
「いいよ、また来てね」
 笑顔で言うバス停ガイド氏に、ついでやや不機嫌な運転士に謝りながら、バスに乗り込む。すると丁度、フロントガラスの向こうで大捕物。
 会場バスターミナルに、黒いフィルムで目隠しされた外国車が乱入しようとする。
『発車少々お待ち下さい』
 運転手が放送、落ち着くまで待とうというのだ。バスの進路は捕り物の方向であり、そのまま走らせると、乗客が危険に直面する可能性も否定できないからである。
 滞留していたバスが数台動く。外国車はジグザグ運転し、植え込みに入り込むなどして逃げ回る。その行く手を巨体が塞ぎ、袋小路を形成。
 ゴツンと音がして外国車が止まる。いずれかのバスにぶつかったのだろう、即座にパトカーが周辺を包囲し、退路を断つ。
 捕り物の舞台はターミナル内に移動し、ジ・エンド。
『発車します』
 大勢が決まったところでバスが動き出す。さぁ、あとは駅まで一直線。
 落ち着いた気持ちで二人は座席に腰を下ろす。ちなみに、夕刻には早い時間の出発であり、空席も見受けられる乗車率。
「ふぅ」
 期せずして同時にため息。
「飲み物買えば良かったね」
 レムリアは言った。
「出せないの?」
 あすかちゃんは言った。それは手品を魔法と思いこんだ幼女の目でありコメント。
 レムリアは笑った。
「あれは手品。モノが手元にないと」
「え?手品なの?なんだ。余りにも鮮やかだから魔法でも使ったかと思った」
「あはは」
 はぐらかす。うそつきに胸が痛い。でも、こればかりは容易に口に出来ない。ごめん。

つづく

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