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ブリリアント・ハート【36】

 自分が意識していた自分と、今の自分とにギャップがあり、頭の中の整理が付かない…自分の認識の変更が即座に出来ないのである。ただ、これらは自分にとってポジティブで有利な変化であるから、脳の中の認識変更作業は積極的かつ短時間で完了する。そしてその完了の合図は、“変わったのだ”という認識として、嵐明けの澄み渡った空のように訪れ、当人を成長過程における新たなステージに立たせる。
 電話が来る。東京。バスの中だが事情が事情につき受ける。マナー違反2回目。
「はい」
 カーテンに隠れてコソコソ。
『情報を少し。まず、タクシーの運転手は無罪放免。野球の試合を思い出して急発進させたんだと。カーチェイスは警察から逃げたんでなくて、“六甲颪”をガンガン鳴らしていて気付かなかったと』
 東京が少し笑って言う。レムリアも笑いながら頷く。高坂運転手…大変世話になったと思う。できればもう一度会いに行ってお礼を言いたい。
『それと』
「はい」
『検問突破。こっちは盗難車で無関係と判明。警察は引き続き捜索中。今のところの警察見解は、動くのを控え、情勢をどこかで見ているのではないか。夜になって動くつもりではないかと。大きな国道、高速道路インターチェンジ、JRの主要駅に重点を絞って警戒中。こんなところだ。まぁバスセンターまでは行き着けるだろう。関門はそこからホテルだな。ラスト200メートルをいかに白々しく乗り切るか。ああちょっと待った』
「え…」
 レムリアは背筋がサッと冷えるのを感じた。新しい情報を彼がキャッチしたのは間違いない。
「なに?」
『今何着てる?』
「ブルーのスカートに白いカーディガン」
『脱げ』
「…は」
 そのセリフは、真意は判っているが、なまじ成人男性に言われただけにちょっとドキッとした、とだけは書いておこうか。
「目撃?」
『そう。可能であれば変えるべし。似たような女の子を博覧会行きバス乗り場で見かけた証言があるらしい』
「わかった。そうする。ありがとう」
 レムリアは言うと、電話を切った。
 スカートとカーディガンを脱衣に掛かる。

つづく

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