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【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【34】

 ですから。
「バケモノだって言わないのかい?」
 ニヤッと笑ったイメージ。表情を作ったのは額まで含めた左右の耳朶の間に並ぶ8つの目、大きく裂け、牙を持った口。
 髪の毛は乱れ縮れ、大きく広がり、長く垂れています。
「ゲームででも見かけたかい。張り合いがないね」
「あんた、〝土蜘蛛〟かい?」
 アラクネが私たちを糸の網で包み込もうとした時、ゆたか君がそんなことを言いました。
 ツチグモ。日本の神話や後の英雄譚に登場するクモの怪物です。準えて、でしょう、現生の地面徘徊性の大型クモ〝タランチュラ〟の和名として〝オオツチグモ〟と付けられています。コバルトブルーも分類上はオオツチグモ。
「これは珍しい物言いを聞いたよ」
 アラクネは8つの目を一様に大きく開いて、驚きの表情。
 糸をぐるぐる巻いてカゴを作ると、中にゆたか君を入れてしまい、するすると巻き上げます。
 牙を見せて8つの目でじろり。
 わざと怖がらせている感じ。
「本当に私が怖くないのかい」
「翅のねーちゃん昆虫の化身だろ。あんたはクモの化身だ」
 アラクネは耳まで裂けた口を開いてニヤリと笑いました。
 しかしゆたか君は本当に平気なようです。
「ぶ、ぶすオンナだとは思うけどさ」
 これにアラクネは毒気を抜かれたようにアハハと大笑い。
「気に入ったよ。妖精さん、あんたたちを私の家に招待していいかい。小さい子達もおいで。よく頑張ってこの人達を助けた」
 アラクネはそう言うと、私が何か答える前に、ゆたか君を入れた糸篭をぶら下げ、歩き出しました。
 8本の手足が〝遺骸の大地〟をかなりの速さで進んで行きます。彼女は根本的に人間のままですから、ゆたか君以上に体重があるはずです。でも、その重さが8本の手足で分散されているため、潜り込まずに済んでいるのでしょう。
「坊主、お前は土蜘蛛の話をどこまで知ってるんだい?」
 アラクネは歩きながらゆたか君に尋ねました。
 ギリシャ神話の住人が日本の伝承について訊くのは不思議な感じ。

つづく

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