【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【37】
でもそんなの大人向けの科学雑誌でやっと出てくる話。
オトナの皆さんが〝子どもにさせたいこと〟と、子ども達が興味を持つものは得てして違う。
そして多くの場合、子ども達の興味の対象を大人達は理解しない。
「だから温暖化が本当なら怖いんだ」
ゆたか君は言葉を繋ぎました。
「酸素濃度の違いとかありかもだけど、そんな大きなクモがもう一度地上に現れたら、人類の天敵になりうる。人類のことだから爆弾とか言い出すだろうだけど、原子爆弾でも追いつかないような途方もない火山噴火や、噴火で毒ガスが充満した世界を彼らは生き延びてきた」
「いいことを教えてあげようか」
アラクネは編む手を休めず、別の手で虫をつまんで口に運びお茶を一口。
「気ぜわしいオバサンでごめんなさいよ。日本から来たんだよね」
「うん……ってあんた日本語うまいなぁ」
「ここにいると言葉は魔法でね。知識豊富な少年よ、日本で有毒とされる虫、昆虫と節足動物、挙げてみな」
「陸生?」
「ああ」
「じゃぁまずサソリ、ムカデ、カバキコマチグモ、刺すハチ。ドクガとかその辺の毒毛。あと止まられるとかぶれを起こすのいたよな。ハネカクシだっけ」
「アリガタハネカクシ(蟻形翅隠し)だね。有毒というより人間さんの皮膚との相性問題に近いと思うけど」
これは私。ちなみに、カバキコマチグモはススキなどの長い葉を巻いて巣を作る徘徊性のクモで、唯一〝有毒〟という言葉が使える日本産のクモです。子グモが親を食べて育つという特異な習性を持ちます。
そう、〝日本の毒グモ〟は事実上この種だけです。もちろんクモ一般に狩猟用の毒を持ちますが、人間さんに向かって行使することはまずありません。噛むことはありますが、威嚇だけです。ジョロウグモ、オニグモ、コガネグモは当然のこと、大型さ故に知られるアシダカグモですら。
「他には?」
アラクネは聞きました。私もお茶をもらいます。ジャスミンティーです。
「えーっと。あ、ハブとマムシとヤマカガシと」
(つづく)
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