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四つ葉に託して【希望】

 一枚一枚に意味があると教えてくれたのは、あの日の君。
 転校してきて、友達もなく何も知らない僕に、色々と優しくしてくれた。
「オレ、そんなの信じないよ」
「まぁね、男の子はね…」
 突如走り出した君。春の公園で制服のスカートと長い髪が揺れて。
 ツメクサの原っぱにスカートがふわりと舞い降りる。
「見つけた」
 君が手にして僕に見せた。
 それが僕の初めての四つ葉。
「あげる」
「えっ?」
「好きな女の子ができたらあげるといいよ。花言葉は〝私を想って〟」
 四つ葉のクローバーは幸運の証。
 そのせいか。
 君のおかげで僕は溶け込み。
 君の味方で僕は孤立から救われた。
 ただ、君は味方の理由を言わなかった。
 僕もしつこく訊く気にはなれなかった。
 なぜなら、君という好きな女の子ができたから。
 訊いて、壊れるのが怖かったから。
 だから、最後の桜の木の下で、僕はようやく君を呼び止めた。
 取り出したあの日の四つ葉。
 3年前を封じた、押し花のしおり。
 望みを託して。
「ごめんなさい。家が近いからって頼まれてさ。勘違いさせるつもりは無かったんだけど」
 桜吹雪にまぎれて散った、僕の最初のクローバー。

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