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【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【42】

 まるで虫を捕まえようとする手です。私たちは逃げ、捉えそこねた手のひらは遺骸の大地を叩き、その都度、遺骸が砂塵のようにザァッと舞い上がる。
 数回繰り返した時、私たちの前に割り込む大きな影。
 コバルトブルー。
 そして、手の甲へ飛びついたのはギガノトアラクネ。
 谷に渡した糸の橋を通って、来てくれたのでしょう。
 でも、彼ら巨大クモより尚、その手は大きい。
 彼らは獲物狩るための巨大な牙を突き立てました。しかし、ナイフが爬虫類のウロコを滑るようで、文字通り歯が立ちません。
「目だ!目を狙って」
 ゆたか君のアドバイスに、大グモ達は、巨大な牙の先からサッと霧のようなものを噴き出しました。
 クモの毒。
 カニの脚を無理にもぎ取るような、メキメキという耳に痛い音。
 それは、毒のもたらした痛みでしょうか、渾身の痙攣でしょうか。震えながら、コバルトブルーを握り潰さんばかりの手のひら。
 手のひらの中で、歩脚を折られつつも抗う、コバルトブルー。
〝我らに構うな〟
 ギガノトアラクネが動きます。握られたコバルトブルーもろとも、手を糸でぐるぐる巻き。
 糸で白くなった手が、2匹のクモを抱え、或いは載せたまま、高く持ち上げられる。
 手の甲にある目が、糸の隙間から、こちらを覗きました。
「テレポートなさい!」
 アラクネが言います。でも、あなたやクモ達がいるのに。
「これの目的がアンタだったら、アンタがいなくなれば、自ずと消える」
 アラクネは、8本の手足を広げ、手の甲の視界に立ちふさがりました。
「お前は、欲望の権化」
 睨んで言い、その尾部の糸イボから糸を紡ぎ、遺骸の大地に絡みつかせる。
 それは狩る前のクモが、命綱を用意する動作。
「少年、何を言われても今は耐えろ。クモが獲物を待つように今はただ機会を待て。お前だけが知ることは、いつかお前にとって利となる。臆することはない。君なら出来る」
 アラクネが、大地駆って飛び上がる。
 私は、意を決しました。
「リクラ・ラクラ・テレポータ」
 二つの出来事が同時に起こります。
 アラクネは、手先から、この地の住人として魔法を使い、火を放ったのです。
 彼女は人間。そして、人間を他の動物から一線を画す存在に変えた原動力こそは、火。
 炎は糸と遺骸の大地を波のように広がり、一瞬で火の海に変えます。表面フラッシュ。
 大きなクモが3匹、三方に飛び去る姿を最後に、私の視界は切り替わりました。
 テレポーテーション。
つづく

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