【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【40】
つまり、生態は似ています。実際、同じような場所に、同じような巣を張って生きています。従って、
オオヒメグモがいない場所で、気候の条件さえ整えば、ゴケグモ類が日本で暮らすことは可能。
そして現在、その条件が整い、何らかの原因で日本に入り込んだ彼らが暮らし始めているのです。
だから、もしも、人間さんが、不快だから、それだけの理由でオオヒメグモ達を駆除したならば。
オオヒメグモのいた場所に、入ってくるのは。
ヒメグモ科。学名はTheridiidae……ごちゃごちゃ網のクモ。
同じようなクモに、方やクモ自体の姿から姫の名を与え、こなた網の形でそう分類。つまり、クモの姿はどうでも良かったのかも。
それだけではありません。実は、先にゆたか君が挙げた日本唯一の毒グモ、カバキコマチグモを漢字で書くとこうなります。
樺黄小町蜘蛛。樺黄色の小町蜘蛛。小町、すなわち、美人。
愛されなければ、やがて毒ばかり。
アラクネ。あなたが言いたいのは、そういうこと?
でも何故、私たちに。
「風が止まるとか、変なことばかりだからさ」
アラクネが、言いました。
「ここは、人の気持ちが、現象になって表れる」
アラクネは私を見、目線を手元に戻し、作業を続けようとしました。
「何だか見づらいねぇ。ウチは明かりが無いから暗くなると店じまいだよ」
言われて気が付きます。辺りが暗い。
ただ、遠くの方には明るさが残っています。夕暮れや天気の暗転というより、日食の暗さ。
何か変です。
〈おばさん!〉
〈翅のおねえちゃん〉
子グモ達が慌てた様子で戻ってきました。
外に出て見上げると、黒い何かが空を覆っています。
それは超巨大なクモが高みにいるような形をしています。ただしそれは、この国に住まうクモ達と雰囲気が違います。
脚が……5本。
「あんなクモは見たこと無いよ」
アラクネが天井伝いに出てきて外を見上げ、言いました。
「なぁ、あれ、手、じゃねえの?」
(つづく)
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