ブリリアント・ハート【41】
「…これから孫達が米寿のお祝いに来てくれると言うから。料理をちょっとね」
年齢の近い彼女たちがおいしいというなら、まず間違いないだろうと思う。老婦人はそういった主旨のことを、孫達の解説を加えながら話し、にっこり笑った。
そしてこれには店のおばちゃんもにっこり。売り上げに繋がって二人は安堵。
「可愛い子には声かけてみるもんね。ありがとう。また来てね」
笑顔でレムリア達を送り出してくれる。
「いいえ、では」
二人は辞して売り場を横切る。私鉄の地下改札前を通り、やや狭い連絡通路を経由。
そして、階段を上がればそこはホテルのエントランス。2階ロビーへ通ずるエスカレータが懐かしい(?)。真っ直ぐ10メートルも行けばJR切符売り場であり、警官が立っているが、そちらへ行く必要はない。
「着いたね」
あすかちゃん。
「うん。あ、お茶でも飲んでいって。付き合わせて申し訳なくって」
「いいの?」
「もちろん、この暑い中何も飲まずに歩かせちゃってごめん」
レムリアは言い、彼女の手を取ってホテルの敷地へ。
警備員が立つエントランスを通過する。警備員はチラと見たが、二人が喋りあっていたこともあり、疑いは一瞬。単なる女の子の二人組と判断した様子。
ゴールインと判断する。安心すると共に、あとはどうとでもなれ、だ。エスカレータで上がり、ホテルのフロントロビーへ。
雑踏から抜けて音量が低くなる。人の数自体が違うし、絨毯が吸音しているせいもある。
足先をその絨毯に埋めて歩きながら、フロントカウンターに目を向ける。女性従業員がすぐさま自分を見、ギョッとした顔になる。
気付いたようである。レムリアは軽く頭を下げ、目線を戻してそのまま通過する。フロント従業員はしかし、半信半疑なのだろう声を掛けようとはせず、行き過ぎる自分の背中を目で追う。その視線を強く感じる。
フロントロビー奥、喫茶ラウンジへ。
「座ってくださいな」
(つづく)
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