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ブリリアント・ハート【40】

 手近の佃煮屋の商品を見つめる。さもおみやげを探している風に。
 店のおばちゃんがそんなレムリアを発見。
「あらお若いのに珍しい。こういうの好き?」
「ええ。貝類とか特に」
 出任せだがウソというわけでもない。
「ちょっと食べてみる?」
「いいんですか?」
「あなた可愛いからサービス」
 おばちゃんは小さな発泡トレイに山盛りのアサリ佃煮をくれた。
 折角なのであすかちゃんと山分け。爪楊枝でつつく。
 美味。
「ご飯が欲しいね」
「そそる。幾らでも行けそう」
 二人の背後を警官が通過する。レムリアは特殊能力でその意識を読む。
〈似てるな。でも違うな〉
 欧州の姫様という触れ込みである。佃煮を好んで食べるとはまさか思わない。
 警官は柱を過ぎて曲がり、エスカレータの向こうへ姿を消す。
 大成功。佃煮万歳。
「行こう」
 あすかちゃんが言った。このまま行ってしまうのはおばちゃんの厚意を無にするようで忍びないが…。
「これから友達とサテライト会場のナイトパレードなんですよ。佃煮持ってパレードもあれなんで…」
 あすかちゃんはさも申し訳なさそうに言った。彼女の言うサテライト会場とは、この駅からほど近い場所に設営された博覧会のサブ会場であり、要は遊園地である。
「ああ、そうかい。いいよいいよ」
 おばちゃんは言うが表情には一抹の寂しさ。
 …このくらいならいいか。
「(我が心の苦しみを喜びへ昇華せよ)」
 魔法のつぶやきにあすかちゃんが首を傾げる。その心に“不思議”が生じたことにレムリアは気付く。
 まずい、と一瞬思ったが、直後、相当なお歳だろう。すっかり腰が曲がった老婦人が、あすかちゃんの肩を、とん、とん、と、ゆっくり叩き、生じた不思議を追いやってくれた。
「これ、おいしいかい?」
 老婦人は尋ねた。
「ええ。あ、おみやげでしたらおすすめですよ」
 あすかちゃんが答える。
「じゃぁ…」
 老婦人はなんと、15人分の佃煮を注文した。

つづく

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