四つ葉に託して【誠実】
高校に入り、2枚目を見つけた時、彼女は隣の席のおっちょこちょい。
数学が苦手。
何度も間違えて消しゴムを使い、その消しゴムが手につかず床に転がる。
「あの、良かったら、説明、しようか?」
見かねて言った僕の顔を、彼女は不思議そうに見つめた。
「女の子苦手なのかと思った。女子と喋ってるの見たことないから」
「そんなことないよ」
苦手なんじゃない。ただ、ちょっと、怖い。
だから、僕は、ゆっくりと丁寧に教えた。
「わかりやす~い」
それからは、彼女の方から訊いてくるようになった。僕はその都度、難しい場合は放課後も使って、彼女に教えた。
図書館で試験勉強。
「家庭教師状態だね」
子どもっぽい、大きな瞳が、笑顔を悪戯に彩る。
模擬テストは良い結果。
「でもおかげで自信がついたよ。勉強が面白いってこういうことかって。いっつも彼氏が『お前のアタマじゃ大学は無理』ってバカにするからさ」
「えっ…」
僕は後ろ手のクローバーを握って隠す。用意していた葉っぱを手のひらに押し戻す。
喉もとの言葉と共に、ぎゅっと握って。
「そりゃ、教えた甲斐があるってもんだよ。受験、頑張りな」
「うん。じゃぁね」
しわくちゃになってしまった、2枚目のクローバー。
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