【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【43】
雨の音。
重く湿った空気がトガをも重くし、身や髪にまとわりつくかのようです。
クモの国からテレポートして。
失神したのか眠ったのか、少し時間が経っているようです。私はひんやりとした固いものに寄りかかり、座った状態。
目を開くと暗闇。
いいえ左側からうっすらと光が入る。
生物的な暗順応より早く、超常感覚の暗視眼の方が働き出します。トンネルと思しき円形の断面の中に私たちはおり、その円形の壁天井には、コオロギの仲間のカマドウマがびっしり。
〈妖精さんが男の子連れてる〉
〈起きたぞ〉
〈すっげー。本物だ〉
男の子……ゆたか君は私の膝枕で目を閉じています。こちらは間違いなく失神しています。
さて、洞窟ということは判りました。クモではなくカマドウマがいるので、クモ達の国ではありません。異常な状況でテレポートしたので、妙なところへ飛ばされたのでしょうか。
光来るその方向に目を向けます。トンネルの出口です。薄暗い空が煙っています。サーッという雨の音からして、草むらが広がっている様子。
そして、出口部分に紐のようなものが横たわっていて、良く見ると有刺鉄線。
有刺鉄線……人間の造作物。
「……ゆたか」
声が聞こえました。掠れていて、切迫していて。
「おーい、みずほくーん」
彼のフルネームはみずほ・ゆたか。
彼を捜す大人達の声です。つまり、ここは人間の世界。
〝クモの国〟は天国エリアに属しますから、エリア内の移動であるテレポートでは人間世界へ飛んだりはしません。なのに、テレポートの呪文で人間世界へ飛んだ。しかも、私たちの属するフェアリーランドを経由せずに。
ということは、一瞬であれ天国と人間世界とが繋がったことを意味します。ブラックホールとホワイトホールで離れた空間が接続されるイメージです。当然、次元が異なるので接点に存在する意識精神には大きなエネルギー準位差が加わる……失神しておかしくない。
そして、あのクモの国には、風であれ手であれ、少なからず人間の恣意が流れ込んでいた。
……理屈っぽい話は止めましょう。ゆたか君を親御さんに返さなければ。
(つづく)
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