« ブリリアント・ハート【43】 | トップページ | 【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【43】 »

桜井優子失踪事件【4】

【序4】
 
 自分のクラスの反応は何か変わったわけではない。超感覚なんて盗聴のデパートと取られておかしくないのだが、対するみんなの反応は書いた通り〝お前を守る〟だ。要するに信頼してもらえているらしい。仲間っていいもんだ。逆に言えば教員たちは口先と底意は異なると言える。これでも教員と生徒の仲まずまずの学校だと思うが、まだまだか。
「つまんなそうだね」
 背後から女子生徒の声が掛かった。
 大人しそうな細っこい娘は北村由佳(きたむらゆか)という。〝事件〟の引き金であり、過程で喧嘩したが、その後の印象は正直〝なれなれしい〟。
「糸は解けたの?」
 理絵子は訊いた。二人だけの秘密に属する。
「全然。…っていうか、何だか醒めて来ちゃった。そこまでしてって感じじゃ無くなってきた」
 北村由佳はそれこそつまんなそうに口をとがらせた。
「理絵ちゃんは恋したことないの?」
 秘密はつまりそういうことだ。理絵子はこの娘に恋敵と勘違いされ、嫉妬されたのである。
「まだ」
 まっすぐ目を見てあっさり答える。恐らくは嫉妬が完全に抜け切れていない故の質問と思うが、事実として経験がないのであっけらかん。
「理想高いんじゃない?」
「無理にするものでも無し。ハイ予鈴が鳴ります」
 追い払う、という程でもないが、自席に戻ってもらう。このやりとりで判るように、北村由佳の馴れ馴れしい言動を訝り、避けるよう勧める級友もある。
 だが、現在の彼女には、自分以外に気軽に話せる存在が無くなってしまったことを理絵子は知っている。だったら、必要な存在であるだけ。
 チャイムに合わせてクラスを見渡し、出席状況を確認。
 空席が一つ。
 超感覚が働く〝開く〟。無論、空席の主と関わりがある。
 バタバタとせわしない足音が走ってきて、教室の戸が性急に引き開けられた。

つづく

|

« ブリリアント・ハート【43】 | トップページ | 【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【43】 »

小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 桜井優子失踪事件【4】:

« ブリリアント・ハート【43】 | トップページ | 【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【43】 »